知的障害者の自立生活についての声明文(第三版)

だれもが地域で暮らしていくために

国連障害者権利条約の第19条では、「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と⽣活するかを選択する機会を有すること並びに特定の⽣活施設で⽣活する義務  を負わないこと」と⾔われています。

重度の知的障害があっても、それを⽀える⽀援体制があれば、公的介護(ヘルパー制度等)を活⽤  して地域の中での「⾃⽴⽣活(=他の⼈と同等のあたり前の⽣活)」をすることが可能です。しか  し、相談⽀援、⾏政のケースワーカー、施設、居宅介護などの⽀援機関も、あたり前に⾝近な地域  で暮らし続ける「⾃⽴⽣活」という選択肢を本⼈、家族に提案しない(できない)状況が続いてき  ています。

 

この声明⽂は、それら⽀援サイドの意識改⾰を求めるものです

 

本⽂

 

① 「居宅介護」、「重度訪問介護」、「移動⽀援」等のヘルパー制度を活⽤し、⾃⽴した⽣活を知的障害のある⼈達が住み慣れた地域で継続していくための提案を⽀援者がしていきましょう。

 

② 重度の知的障害者の地域での⾃⽴⽣活を可能にするコーディネーター(コーディネートできる⼈)やヘルパーを育て、増やしましょう。

 

③ 家族介護が限界に達した時に選択の余地なく⼊所施設、グループホームへの⼊所を選ぶしかない状況があります。その状況を改善するため、成⼈(あるいは30歳など、⼀定の年齢)になった段階で公的介護を活⽤して家族から⾃⽴した⽣活を選択する機会を⽀援者が提案していきましょう。

 

④ 家族介護が限界に達した時に、⼊所施設、グループホームを提案する前に、公的介護を活⽤した「⾃⽴⽣活(=他の⼈たちと同等の地域社会でのあたり前の⽣活)」の可能性を検討しましょう。

 

⑤ 知的障害のある⼈たちの周囲が家族や⽀援者だけになると、さまざまな地域社会の⼈々との関わりが希薄になり、当事者たちの⽣きる⼒も減退していきます。多様な⼈びととの親密な関係こそが⼈としての尊厳を守る⼒となるので、そうしたネットワークがつくられていくよう、具体的に取り組んでいきましょう。

 

上記の提案を⽀援者が意識的にしていくことで、知的障害のある⼈たちが地域で安⼼した⽣活を継続していく可能性が拡⼤していくと私達は考えています。

 

 

意思決定⽀援や常時介助を必要とする知的障害のある⼈たちが最初に提案される⽣活 は、家族との同居、グループホーム、⼊所施設に限られていることが多くあります。現状では、障害福祉サービスを活⽤することで地域の中で⾃⽴した⽣活を構築することが可能になってきています。そうした中、障害者⽀援に関わる⼈たちが「最初に提案する選択肢」として地域での⾃⽴⽣活を意識的に提⽰していく必要があると、わたしたちは考えました。

 

 

知的障害のある⼈の⽣活を考えるにあたり、下記のポイントが⼤切だと考えています。

 

1、体験していないことを推測し、判断することが苦⼿な知的障害のある⼈たちになされる提案は、体験した状況を踏まえて変更が可能なものであるべきであると考えます。

 

2、重度知的障害者の家族介護が限界になった時になされる選択肢が、グループホームか施設⼊所しかないという状況は改められなければなりません。他の者との平等の観点から、地域での⾃⽴⽣活が最初に検討されるべきものであると考えます。

 

3、ここで「⾃⽴⽣活」というのは、⽀援を受けずに⼀⼈だけで暮らす、という意味では決してありません。それぞれの必要に応じて、必要な分の⽀援を得ながら(時には24時間介護体制もあります)、他の⼈たちと同等のあたり前の⽣活を地域社会の中で営む、という意味です。

 

4、グループホームの存在を否定するものではありません。しかし、地域⽣活の可能性を検討する中で、本⼈に⾃⽴⽣活、グループホームと複数の選択肢が与えられ、本⼈が主体としての選択を可能にすることが⼤切だと考えます。

 

5、介護、経済、住居の⽀援が⼀体となっている⼊所施設、グループホームにおいては、様々なリスクが増⼤する傾向にあると考えています。(例えば、グループホームの世話⼈を本⼈は選ぶことができないので、その⼈とそりが合わず我慢できなくなった場合に転居を余儀なくされると、そこで構築したすべての関係を

⼿放さなくてはならなくなる、虐待の発⽣率が⾼い等)。

 

6、現⾏の⼊所施設はもちろん、グループホームも、障害者だけが利⽤者として共同⽣活を送ることから、障害のない⼈たちとは⼤きく異なる⽣活様式となりがちであり、ほとんどの場合、地域から分離されている状況があります。

 

7、都市部においては、グループホームの新規建築は困難が多く、⼊所⽀援希望者の数を⼤きく下回った設置計画しかたてられていません。

 

8、フォーマルな⽀援が当事者を囲み、家族以外のインフォーマルな関係性が奪われている状況下で、当事者が本来持っている⼒が奪われています。知⼈や友⼈などインフォーマルな関係性が豊かであり、特に意思決定⽀援にそれらの関係が尽⼒しうる状況が必要だと考えます。

 

9、現在、実現している重度知的障害者の⾃⽴⽣活も過渡的な状況にあり、より良い状況を⽬指していく必要があります。

 

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