第1回 ONLINEサロン【知的障害のある人の自立生活について考える】報告
「知的障害のある人の自立生活について考える会」第1回目のオンラインサロンが8月12日19時から開催されました。当日の話題提供者は、大阪・茨木で知的障害者の自立生活を支援している社会福祉法人ぽぽんがぽんの活動について、法人内で相談支援事業を担当している山本真輝(やまもとまさき)さんにご紹介いただきました。
約30分のお話は、地理と地域の特徴、活動の歴史とそれに伴う活動の広がり、そして制度との関係、更に自立生活をしていらっしゃる4人の方の中から、特に1名の方の支援の紹介をしていただきました。
お話の後、ブレイクアウトルームで6つのグループに分かれ、約30分のセッションを行いました。世話人等がファシリテーターとして各グループに入り、ディスカッションを進め、まとめました。
その後のセッションの全体での共有では、様々な意見や質問が出てきました。その後のディスカッションと合わせて、三つの点についてまとめておきます。
ひとつは支給決定について。事例に出てきたOさんの重度訪問介護の支給時間数が多い、と話題になり、どのようにして時間数を獲得しているのかという問いに対し、同法人太田氏から、時間をかけて、時には座り込みなどもしながら、支給時間数を伸ばしてきたというお話がありました。担当者によって対応が変わったり、支給決定時間通りに支給されないなど理不尽なこともありますが、弁護士を入れて交渉を続けるなど、あきらめない姿勢が大事ということでした。また他の参加者からは、重度訪問介護では単価が安く担い手が少ないため、行動援護と居宅介護で支給決定してもらい、それらをうまく活用していくという方法もあるとの助言もありました。
2つ目には自立生活を本人がどのように受け止めているのかについて。同法人太田さんと水野さんがお答えくださり、大田さんからは、自立生活について、重度知的障害のある本人にとっては今まで経験をしたこともない生活形態であり、それを親亡き後、家族が本人を受け止められない中で、施設ではなく地域で暮らし続けるための方法として、支援者側からある種誘導するような形でスタートさせてきたことがあった。その意味で家族の意識、まわりの支援者の意識が大きく影響するとのことでした。しかし、一方で言葉のコミュニケーションが可能であり、意思を伝えることができる人の場合には、こちらのグループホームへの勧めを拒否し、自ら自立生活を望んで、その生活の中で自分を取り戻していった場合もあったそうです。
水野さんからは、支援者が本人の思いを代弁することが重要であり、本人の声なき声、非言語コミュニケーションから読み取り、本人の思いを探しながら自立生活を実践し、また始まった後も日々本人の様子を見ながら見立てを作り、複眼的にチェックしながら、本人の思いにどれだけ寄り添っているかを確認していく作業が必要だというお話を伺いました。
3つ目に、知的障害のある方と支援者の関係について。水野さんは嘱託医の言葉を紹介してくださり、自閉症の人たちは、「まず人につき、次に場所につき、そしてことにつく」というように、まずは本人と支援者の人間関係が出来上がってくることが大事で、それによってその人とならどこでも行けるし、何でもできるようになり、世界を広げていくこともできる。まずは人と関係を作ることが大事ということでした。そのためには、支援者はその人の「像」を作り上げることが必要で、彼・彼女自身がこれまでの生活歴や家族関係の中で経験してきたであろう境遇を、できるだけ同じ目線で感じようとすること。そうすることで、今そこにいるその人は「困った人」ではなく、「困っている人」であり、その人が最もつらい立場にあることを理解することが大事だというお話でした。
最後に太田さんから、支給決定の話など、制度の関わる話は今後積み上げて政策提言等も模索する必要があること、また、答えを出そうとしないこと、議論を重ねて互いの言葉から学んでいくことがサロンの良さではないか、そこから何かが生まれていくのではないかという素敵な言葉をいただきました。